理事長所信
 
 

 
 一般社団法人 三木青年会議所
 第59代理事長 藤原 和則

            心  眼
   ~ 為すべきことを 、為すべきときに 、成せる人へ ~


 
【はじめに】
「一年の計は穀をううるにしくはなく、十年の計は木をううるにしくはなく、終身の計は人をううるにしくはなし。」という言葉があります。国家百年の計は人づくりにあり、まちづくりの根幹もまた人づくりにあります。一般社団法人三木青年会議所は、 1959年「次代を担う青年として広く社会の見地に立って今後の産業経済文化発展に寄与する」との志の下、ここ三木の地で産声をあげました。以来、多くの先輩諸氏がひとづくり・まちづくりを通して三木市の発展に貢献され、現在も本業を通して社会貢献にご尽力されながら、各方面でご活躍されています。そして長年にわたりその想いを受け継いで活動してこられました。我々は、この世界を未来の方々よりお借りして活動しています。だからこそ、その想いの根底にある「明るい豊かな社会の実現」に向けて、三木市の諸問題と向き合いながら「修練・奉仕・友情」の三信条を基本とする創始の精神と、その高い志を三木市の発展のために、未来へ引き継いでいける人材の育成に努めていかなければなりません。
  
 
【真贋を見極め、正しきものを選択しよう】
ITの発達により、情報が極めて錯綜する現在、物事の本質を見極め迅速に対応する必要があります。人間には視覚・聴覚・嗅覚・ 触覚・味覚といった五感と呼ばれる感覚が備わっておりますが、その割合の 83%が視覚情報によるものだと言われています。自分の目に見えているもの、自分の持っている情報が絶対的に正しいと思い込んでしまうのは人間の性であり、各々の盲目的な認識が四方八方に飛び交い、物事の本質からかけ離れてしまっているのが今の世の中の状況だと言えます。物事を完全に信じつつも、同時に疑いをもつことは、決して矛盾ではありません。それは真実に対するおおいなる敬意であり、真実は常にその時の言葉や行動になりうるものの先を行くものなのです。物事を理解しようと試みていると、徐々にその本質が見極められるようになっていきますが、それと同時に不都合な実態も目にすることがあります。しかし、それは物事の真贋を正確に見極めるためには必要なことです。我々は脈々と受け継がれてきた伝統の中からもその本質を見極め、表面的な慣習を継承するのではなく、その根底に流れる原理原則を理解し、行動しながら、時代に即した体制づくりを行うとともに、次世代に真の伝統を継承してまいります。
 
 
【自分の想いを言葉で伝え、繋がりを大切にしよう】
SNSの普及により、世界中の人々と簡単に繋がることができるようになる中で、メールのように何か媒体を介してのコミュニケーションが主体となりました。その陰でコミュニケーション能力が低下するとともに、未成年が関係するものも含めてインターネット上の犯罪やトラブルが増加しています。顔を合わせて、目を見て話したり、相手の方を向いて、互いの言葉で会話をしたりする機会が減っています。そして、誰とも向き合わずに、触れ合うことなく生活するということも可能になってきています。
常に繋がれるツールがあることで、相手の都合や時間を考えなくてもよい、相手の実像がないままの要求に応えるだけのコミュニケーションとなり、自分基準で相手に対応し、その時の気分によっても対応が左右されたり、一方的に相手をこういう人物だと評価したりしてしまいます。また、実像がない相手を信用し犯罪に巻き込まれる場合もあります。そんな時代だからこそ、膝を突き合わせ、顔を合わせ、自分の言葉で想いを表現できる人となれるよう、人と人とのつながりを大切にし、会員間の連繋の強化に努めるとともに、一番身近な理解者であるべき人々に感謝できるよう取り組んでまいります。
 
 
【終生の友を得よう】
社会には色々な考え方の人がたくさんおり、その中には同じ考え方の人が必ずいます。それを見つけるためには、自らが情報を収集し、その情報を吟味し、自分のものとする必要があります。そして、できるだけ想いを伝えようとするものに多く触れる必要があります。また、逆に全く違う考え方の人も多くいます。他視点を持つ者同士が相互理解を深めるためには、互いに話し合い、時には喧嘩にもなるかもしれませんが、お互いが本音でぶつかり合うことを経て、互いを認め尊重し合いながら一緒に活動する必要があります。そんな人がより多く集まることにより、さらに濃い情報が集まり、考え方も昇華されていきます。お互いをよく知るからこそ、全てを許容し、互いの欠点を補い活動もできますし、どんなに離れていても何かあれば必ず駆けつけ、そして一言も発しなくても共に杯を酌み交わすだけで理解し合える、そんな友と呼ぶに相応しい人を一人でも多く拡大してまいります。
 
 
【見聞を広め、皆で想いを共有しよう】
世界中に溢れる膨大な量の情報には Webと非 Webとがあります。現在はキーを叩けばインターネットを通して様々な情報を簡単に得ることができます。また、SNSの影響によって友人・知人の輪が日本中、人によっては世界中に広がっています。しかし、そこから得る情報、人物の全てが真実を伝えているわけではありませんし、その人物が実在するのかさえ定かではありません。だからこそ自らの足で見知らぬところへ実際に行く必要があるのです。行かなければ感じられないこと、そこでしか出会えない人たちがたくさんいます。その場所でしか、感じられない空気、温度、そして文化があります。新しい物や人との出会いの中で、こんな見方、考え方、こんな世界もあるのかと気づきます。自分の五感で感じるからこそよりリアルな情報として蓄積され、感動を呼び起こすのです。それを皆で共有できるよう、また、その活動を支援できるよう、各方面・団体ともコミットしながら活動を展開してまいります。
 
 
【未来に向けて、我々の魅力を発信しよう】
現在、我々に対する認知度はどのくらいあるのでしょうか。そして、我々の運動の発信力はどのくらいあるのでしょうか。これからの社会においては、自分で情報を取り入れ、考え、発信できることが優位に立つ条件とされています。今後、情報の量が更に 30倍近く加速し、圧倒的情報社会になると言われています。情報を発信し続けるということは、新鮮な情報を提供していることと同じです。情報は新鮮であるということと、たくさんの人が見ているということが重要であり、それが「有益で信頼のおける情報である」ということになります。インターネットの普及により情報源が増え、情報の数が圧倒的に増えたとなれば、そこから選ばれることの困難さは明白です。つまり情報を発信し続けなければたくさんの情報の中に埋もれてしまうということにほかならないのです。人が価値を感じる部分には、機能、感情、世界観の3つがあると言われていますが、現在は、機能的な部分以外のところが重視されるようになり、「自分をより成長させよう」とか、「世の中の為に貢献していこう」といった、発信の方が市民には受け入れやすくなっています。我々や我々の団体を好きになってもらえるよう感情や感性に訴えかけられる、そして活動の本質を伝えられる情報の発信を通して、我々の認知度を高め、我々の運動を知ってもらい、普段の活動や事業の時にも「応援してくれる人」を増やすことのできる、未来に繋がる魅力の発信をしてまいります。
 
 
【誇りある我がまちを愛せる人を増やそう】
日本創成会議の中で今後20年以内に全国の市町村のうち約半数が消滅する恐れがあり、20~39歳の女性人口が半減する自治体を「 消滅可能性都市」とし、わがまちも名前を連ねています。その要因としては、経済環境等の変化による、工場の撤退、進学等に伴う都市部への若年層の流出、子どもを産み・育てる環境や支援が不十分であることなどが挙げられています。このままの状態が続けば、近い将来、経済・政治の衰退に歯止めがかからない可能性もあります。また最近の社会においては利益至上主義や企業モラルの欠如による企業の不祥事や、高齢者等をねらった詐欺事件の横行などに見られるように、在り方に問題があると言わざるを得ない状況にあります。我々は本業を通じ地域の経済活動を発展させ、社会への貢献をしながら、地域から必要とされる青年経済人へと成長してまいります。
また、少子化が進む中で地域を担う次世代の人材を育成することがより重要となってきています。現在、学習や労働といった具体的な対象への意欲だけでなく、成長の糧となる様々な試行錯誤に取り組もうとする意欲の減退が懸念されています。近年、スポーツや外遊び等の体を動かす時間が減ってきており、大半は自分の家や友達の家など屋内にいる事が多く、戸外であっても周囲に友達がいても各々が別々に一人遊びをしています。人は、自分の身体を動かし五感を駆使していく中で様々な発見や学習をしたり、達成感や満足感を得たり喜びや悔しさを感じたりするとともに、身体、心情と知性が相互作用を起こしながら成長していきます。また、仲間と共に課題を達成していく体験を通じて、積極性や主体性を発揮できるようになり、コミュニケーション体験を通じて、自己を客観的に見つめる力を培うとともに、自分の存在意義を実感することができるようになります。そして、同一のルールの下で仲間が互いに競い、ルールを大切にして他人を思いやる精神を培うような、仲間と切磋琢磨できる体験活動が欠かせません。ですから次世代を担う一人一人が好奇心を持ち、それを他者や社会と自己との関係への興味や関心に発展させ、社会的期待や社会のルールやマナー等との関係をとらえつつ、社会との関係の中での自己実現を図り社会的自立を目指す意欲を高められるよう取り組んでまいります。
この地域には、多くの資源があります。我々自身がこのまちのことをより理解し、このまちを本当に心から愛せる人になれるよう活動してまいります。我々のまちは、本当に素晴らしいまちであり、それを市民の方々と共感できる永続可能な活動を進めるとともに、次代を担う人材を育成してまいります。そして、一人一人が未来に希望をもち、このまちの一員であることに誇りを持ち、まちを愛せるよう取り組んでまいります。
 
 
【高尚な粋人となろう】
大きな犠牲を払った大戦後、日本を含めた多くの国々が、物質的には豊かになりました。では、心も豊かになったのでしょうか。人生は、人格を高めるための時間や場所であるということを理解しなければ、人生における必要性を満たすことはできません。ですから一日中思考を凝らし、思い巡らせて、先のことを考える必要があります。それが成長や向上や発展へと繋がり、自らの人格を高め、人生を豊かなものにすることができるのです。ただ、一つのことに対して勤勉に働いたとしても、それ以外の部分が怠惰であるのならば、人生に豊かさを得られません。怠惰に浸ることなく自らを克己してよく思考し、よく励む必要があります。常に高いレベルで思考し、自らを律しながら行動してまいります。
また、競争激しいスピード社会の中で自分自身をつい見失いがちになります。現在の使い捨て文化に対して潤いがないと感じるのは、日本文化の源流だった風流や粋の文化や精神を、日本人が捨て去ってしまったからなのです。歴史上の偉人や粋人達は、今の幸福だけでなく次世代の幸福すらも考慮に入れて行動されていました。日本人にとって粋とは、少しだけ自分の思いを我慢しても、他人の幸せを考慮する心意気であります。そういった心意気を持ち、花鳥風月を愛でる心の余裕と、風流を好み、趣味の豊かな人になれるよう取り組んでまいります。
 
 
【真剣に、そして遊ぶかのように活動しよう】
長い地球の歴史から見れば、我々人間の一生なんて本当に一瞬です。出来ることはほとんどないのかもしれません。しかし、その中でいかに自らの心に従い、与えられた能力のフルスペックを使い生きるのか。そこに人の幸せの本質があるのではないでしょうか。
仕事を全力で遊ぶ人たちを、人々は尊敬し、活躍すれば一流と呼び、結果が出れば成功者と呼びます。遊びに「仕方ないからやる」という状況はありません。全力でやるからこそ子ども達は積み上げた積み木が崩れた時に涙を流し、全力でやるからこそ終わったときにはスイッチが切れたように眠ります。子ども達が遊びに熱中するのと変わらない「情熱」を大人がやった時に生まれるパワーは底知れません。メリハリは大切ですが、仕事とかプライベートとか、 ONとか OFFとか、公とか私とか、様々な「区切り」を一度全部取り払って、「自分は今遊んでいるか、いないか」の一本に絞って、自身の行動を見つめ直してみましょう。それは社会で合い言葉のように出てくる努力や勉強、成長と言った義務感を誤魔化したような言葉とは真逆のエネルギーです。効率やスピードが優先される時代の中で、すぐに効果のあらわれないものは、どんどん排除されます。しかし、その中にしかない一見無駄なもの、無駄な時間に見えるものにも輝くものが必ず隠れています。すべての事に対して妥協せず全力で取り組み、仕事も活動も遊びも情熱を持って本気で取り組んでまいります。
 
 
【おわりに】
松下幸之助氏が「社会情勢とか天下の情勢が変わって、なすべきときになすことができないという場合もあります。ありますけれども、なすべきときに敢然とやらない、やってはならんときに誤ってやるというようなことをやっていると、だんだん勢力がなくなってしまう。そういう節々が非常に多いんであります。戦うべきときに戦わず、戦ってはならんときに戦うというようなことをやっている国は、必ず衰微する。これは昔の歴史がそう教えています。」という言葉を残しています。
我々一人一人が、動くべき時には動かなくてはならず、動いてはいけない時には動いてはならないのです。それができるかできないかということが一番大切であり、刻々と変わる情勢の中で、その一瞬の見極めが非常に重要です。
信念の下、今、何を成すのかを全力で考え、全力で取り組み、そして全力で楽しみながら活動してまいりましょう。本気になるからこそ仲間と共に一喜一憂することができるのです。
心の眼を開き本当に大切なものを見極めましょう。男が、そして女も惚れるような人となりましょう。長い歴史の中の一瞬かもしれませんが、魂の灯を輝かせ、共に全力で駆けてまいりましょう。その先に我々の目指す未来があるのですから。
 
 
 
〈基本方針〉
 ・本質を見極め、伝統を継承できる体制づくりへの取組
 ・志高き、真なる同志拡大への取組
 ・想いを共有し、笑い合える会員間交流への取組 
 ・運動を広め、魅力を感じられる広報への取組
 ・地域の魅力を次世代を担う一人一人と共感できる取組